家と子供と、今日のおじさん(仮)

2017年築の家で、妻+子供3人と過ごす記録です。ほのかに工学テイスト。


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【今日の料理】 2011/12/23 夕食
 昨晩は神奈川県の実家に泊まり,今日は所用で神奈川県の湘南台に行きました.閑静な住宅街で,暮らしやすそうなところでした.
 神奈川から熊谷は遠く,帰りは夕方になってしまいました.今日は,スーパー惣菜を積極的に活用した(手抜き)夕飯です.
CIMG7413.jpg
★米飯

★みそ汁,豆腐・ほうれん草

★サバ煮(スーパー惣菜)

★イカ里芋煮(スーパー惣菜)

★キムチ

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【今日の料理工学】 カリッと,ふっくら~フライドチキンの数値解析
 もうすぐ,クリスマスです.
 クリスマスといえば,フライドチキン(鶏の唐揚げ)が人気です.私も,フライドチキンが好きで,たまに食べたくなります(今年のクリスマスには,ケンタッキーのフライドチキンを買う予定です).

 フライドチキンの特徴は,カリッとした表面と,ふっくらした中身の,ほどよいバランスにあると思っています.
 今回は,フライドチキンの「揚がり具合」について,考察してみます.
(ちなみに,私は「揚げ物」は苦手で,ほとんど未経験です.今回の記事では,揚げ物を知らない人間が,揚げ物について堂々と語っている点に,ご注意ください.)


★「カリットした表面」と「ふっくらした中身」のできるわけ
 フライドチキンの,「カリッとした表面」と「ふっくらした中身」は,どのようにして形成されるのでしょうか.
 フライドチキンに限らず,揚げ物では,高温(170~180℃)に熱した油の中に,水分を含む調理物を入れます.そうすると,油の熱は,調理物の表面から内部へと,徐々に伝わっていきます.
 材料の表面に近いほど,高温になります.油の温度は100℃を超えますから,表面近くでの温度も,100℃を超えます.そうすると,調理物に含まれた水分が沸騰して,水蒸気となって蒸発します.後に残るのは,水分が抜けてカラカラになった調理物です.これが,揚げ物の「カリッとした表面」になると考えられます.
 一方,材料の内部では,表面ほど温度は上がりません.じっくりと時間をかけて加熱されることで,「ふっくらとした中身」が形成されるのだと考えられます.

 油の温度が高すぎると,すぐに表面の温度が上がってしまいます.このため,内部に熱が届く前に,表面の水分が抜けて,表面ばかり固い揚げ物になってしまいます.
 一方,油の温度が低すぎると,表面の温度がなかなか上がりません.結果として,表面の水分が抜けきらず,表面と内部の状態にメリハリのない揚げ物になってしまいそうです.

 以上のように,おいしいフライドチキンを得るためには,油の温度の設定が,重要だと考えられます.


★フライドチキンのコンピューター・シミューレーション
 油の温度によって,フライドチキンのできばえが,どのように変わるかを,調べてみます.

 これまで,当ブログでは,煮物のシミュレーション(数値計算)について,何度か取りあげてきました(→こちら).今回は,この煮物のシミュレーションを応用して,揚げ物のシミュレーションを作ってみたいと思います.
 煮物と揚げ物の共通点と相違点は,次の通りです.
 ・共通点:
  ・いずれも,高温の液体中に調理物を入れることで,調理物を加熱調理する.
  ・調理物の温度変化は,「熱伝導」によって予測(シミュレーション)できる.
 ・相違点:
  ・煮物では液体の温度が約100℃,揚げ物では180℃前後.
  ・揚げ物では,液体の温度が水の沸点を超えるため,調理物からの水分の蒸発が大きい.
 
 以上の共通点と相違点を踏まえると,煮物のシミュレーションをベースに,揚げ物のシミュレーションを実現するには,「水分の蒸発」を,モデルに組み込まなければなりません.

 下図1は,以前,煮物の温度変化のシミュレーションに用いたモデルです(→詳細は,こちら).厚さh[mm]の調理物について,x軸方向の伝熱のみを考える,1次元モデルです.
<図1>
20111223z1.jpg
 1次元の熱伝導の基礎式は,次式1です[1].
[1]黒崎ほか;伝熱工学,コロナ社,(2009)
<式1>
20111223s1.jpg
 ここで,
 ・T:温度[℃]
 ・t:時間[s]
 ・D:温度伝導率[m^2/s],水の値を使用=1.43×10^-7[m^2/s]…[1]

 このモデルを,下図2のような短冊に分割します.
<図2>
20111223z2.jpg
 そうすると,式1は,次式2のように離散化できます.(詳しくい導出手順は,→こちら
<式2>
20111223s2.jpg

 さて,式2では,水の沸騰を考えていません.このままだと,温度が沸点の100℃を超えても,際限なく上がっていってしまいます.これでは,揚げ物のシミュレーションはできません.
 そこで,式2で計算される温度Tcal[℃]が100℃を超える場合には,次の手順で,水の蒸発量を計算します.
)100℃を超える分の昇温に対応するエネルギーEover[J](余分なエネルギー)を算出する.
 Eover=c・(mb+mw)・(Tcal-Tv)
 ここで,
 ・c :比熱[J/kg・K],水の値を使用=4200[J/kg・K]…[1]
 ・mb:当該短冊内が含む,水以外の部分の重量[kg]
 ・mw:当該短冊内が含む,水の重量[kg]
 ・Tcal:式2で計算された温度[℃](Tcal>100℃)
 ・Tv :水の沸点[℃](=100℃)
)余分なエネルギーEover[J]で,気化できる水の量mv[kg]を算出する.
 mv=Eover/qv
 ここで,
 ・qv:水の蒸発熱[J/kg]=2.4×10^6[J/kg]…[1]
)mvの大きさによって,
-a)mv≦mwのときには,短冊にまだ水分が残るので,次のようにする.
 ・短冊の新温度  :T,t+Δt=Tv=100℃
 ・短冊の水の新重量:mw,t+Δt=mw-mv
-b)mv>mwのときには,短冊の水分が全てなくなるので,次のようにする.
 ・蒸発に使用したエネルギー:Euse=mw・qv
 ・短冊の新温度  :T,t+Δt=(Eover-Euse)/(c・mb)
 ・短冊の水の新重量:mw,t+Δt=0

 以上によれば,短冊が100℃になると水分が蒸発を開始して,水分がゼロになると100℃を超えて昇温する,という現象を,うまくシミュレーションできます.


★油温によって,揚げ物の仕上がりはどう変わる?
●計算方法
 上述の方法で,フライドチキンを想定して,揚げ物のシミュレーションを行ってみました.
 調理物の諸元は,以下の通りです.1次元モデルを使っている都合上,「唐揚げ」というよりは「チキンカツ」のような平べったい寸法の,鶏肉です.
 ・食材:鶏肉
    ・熱伝導率,比熱,密度:水の値を使用
    ・水分量:70wt%…文献[2]を参考にした.
 ・寸法:長さ(x方向)×高さ×奥行き:20mm×100mm×100mm
[2]文部科学省;日本食品標準成分表2010
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/houkoku/1298713.htm

 計算条件は,以下の通りです.
 ・短冊の分割数 :10個
 ・短冊の幅   :Δx=2[mm]
 ・短冊の初期質量:20[g](水14[g]+水以外6[g])
 ・時間キザミ  :Δt=0.1[s]

 調理条件は,以下の条件としました.
 ・食材の初期温度:20℃
 ・油の温度   :160℃,180℃,200℃,の3通り


●計算結果
 数値シミュレーションによる温度分布の計算結果を,下図3に示します.横軸は位置,縦軸は温度です.各グラフとも,経過時間の異なる複数の線図を,プロットしています.
<図3>
・油温=160℃
20111223z11.jpg
・油温=180℃
20111223z12.jpg
・油温=200℃
20111223z13.jpg
 どの油温でも,材料中心の温度の時間変化には,大差がありませんでした.いずれも,約6分で,中心温度が約80℃になっています.この時点で,だいたい火が通ったと考えられそうです.(文献[3]によれば,「ジューシーなから揚げを作るには、肉の温度を60~80℃に保つのがポイント」とのことです.)
[3]NHK;ためしてガッテン,鶏のから揚げ~短く2度揚げ~,2008/6/4放送
https://www.nhk.or.jp/gatten/recipes/R20080604_02.html
 ※揚がるまでの時間の計算結果「6分」が,実際と一致するのかどうか,よく分かりません.でも,ネット情報によると,トンカツなどは,3~5分程度で揚げるようなので,それほど外れた値ではないと思っています.(自分で揚げ物をしないので,見当がつきません.)

 では,表面はどうでしょうか.下図4は,時間変化に伴う,「中心の温度」と「表面の水分量」の変化です.横軸は時間,縦軸は温度(赤)および水分量(青)です.(表面:x=±9mm,中心:x=±1mmの位置の短冊です.)
<図4>
・油温=160℃
20111223z31.jpg
・油温=180℃
20111223z32.jpg
・油温=200℃
20111223z33.jpg
 表面の水分量を見ると,油温によって,次の違いがあります.
 ・油温=160℃:t=6分でも,水分が残る.
 ・油温=180℃:t=6分で,水分がゼロになる.
 ・油温=200℃:t=4.5分で,水分がゼロになる.
 つまり,中心まで火が通った6分後の状態では,油温によって,表面の状態が異なると推察できます.
 すなわち,油温160℃は表面に水分が残るので,やや「しんなり」しているかもしれません.逆に200℃では,表面の水分が飛びすぎて,「コゲコゲ」かもしれません.ただし,これは推定にすぎません.ひょっとすると,200℃がちょうどよくて,160℃でも180℃でも水っぽい,ということかもしれません.シミュレーションだけで,実験と突き合わせていないため,詳しい状態までは分からないのが,残念なところです.

 ともあれ,油温を適正に保たないと,「カリッとした表面」(=表面の適正な水分量)と「ふっくらした中身」(=中心の適正な温度)を両立できないことが,シミュレーション結果から推察できます.


(補足)
 この記事を読んでも,上手にフライドチキンを作れるようには,なれません.上手な唐揚げの作り方は,文献[3](前出)を参照ください.「余熱調理」がポイントだそうです.


【今回の結論】
 油の温度が不適切だと,「カリッとした表面」(=表面の適正な水分量)と「ふっくらした中身」(=中心の適正な温度)のバランスがくずれて,おいしいフライドチキンができません.


「育休おじさんは,皮がカリッと乾燥していますね.高温で揚げましたか.」
「いいえ.冬場の水仕事のせいです.最近,アカギレがひどくて….『桃の花』を塗って下さい.」
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