電子レンジの加熱時間は、どれくらいが適当なのでしょうか? 目安時間を知るために、実験をしました。
電子レンジは,とても便利です.
私の実家に電子レンジが来たのは,今から20年ほど前.平均的な家庭よりかは,やや遅い導入時期だったと記憶しています.導入が遅かったのは,当時,実家の電力契約が20Aほどで,1000W超の電子レンジ(オーブンレンジ)は,荷が重かったためと思われます.電子レンジを買うと同時に,電力契約を増し,新しく,電子レンジ専用のコンセントを設置したことを,覚えています.
実家の電子レンジは,今や高級なオーブンレンジになりました.しかし,我が家で使用しているのは,安価な電子レンジ(おまけオーブン機能つき)です(下図1).
<図1>

この電子レンジですが,温めの加減が,いまひとつ,うまくいきません.「自動あたため」機能もあるのですが,熱くなりすぎる傾向があります.このため,いつも,自分で時間を設定しています.
電子レンジの加熱時間は,どのように設定すればよいのでしょうか.
説明書[1]を見ると,設定時間の目安が記載されていました.設定時間は,次の3つのカテゴリに分類されています.
・あたため :通常モード(出力500W)
・冷凍食品あたため :通常モード(出力500W)
・解凍 :解凍モード(出力170W)
[1]松下電器産業(当時);家庭用オーブンレンジNE-TZ15A取扱説明書,(2006)
具体的な調理時間は,次のように記載されています.
●あたため
・冷ごはん 1杯(150g) 約1分20秒,
・チャーハン 1人分(250g) 約2分40秒,…
●冷凍食品あたため
・ごはん(固まり) 1杯分(150g) 約2~3分,
・ピラフ(パラパラのもの) 1人分(250g) 約4~5分,…
●解凍
・ひき肉 300g 約6分30秒~8分30秒,
・薄切り肉 300g 約5分30秒~7分30秒,…
調理のたびに,このリストを参照してもよいのですが,それは煩わしい気がします.そこで,上のリストから,設定時間を見積もるための簡単な方法を考えてみます.
幸い,このリストには,全ての食材について,分量がグラム単位(液体ではミリリットル単位)で記載されています.そこで,食材の重量[g]と設定時間[min]の関係を,調べてみることにしました.
横軸に食材の重量[g],縦軸に設定時間[min]をとってグラフ化すると,下図2のようになりました.ここで,図2では,あたため,冷凍食品あたため,解凍,のカテゴリごとに,色を変えてプロットしてあります.
※分量がミリリットル単位のものについては,1ミリリットル=1グラムとして,プロットしました.
<図2>

図2を見ると,バラツキはありますが,おおむね,食材の重量と設定時間には,比例関係があると言えます.
プロットしたデータを最小二乗法で線形近似して,比例定数を求めました.この結果から,調理時間の目安は,以下のようになります.
・あたため :100gにつき,1.0分(1分00秒)
・冷凍食品あたため:100gにつき,2.8分(2分50秒)
・解凍 :100gにつき,2.3分(2分20秒)
食材によらず,100gあたりの設定時間がほぼ同じになる理由は,次のように考えられます.
・電子レンジでは,主に水を加熱する.
・一般的な食材の主成分は水である.
・食材中の水分の比率は,食材によって,そう大差はない.
(とはいえ,水分の比率のバラツキはあるので,図2のプロット点はバラつく.)
冷凍食品では,氷→水にするときに余計に熱(融解熱)が必要なこと,最初の温度が低いこと,から,より加熱時間が長く必要になっているのだと思われます.また,解凍では,通常モード(出力500W)よりも,出力が低いモード(出力170W)を使うため,同列には比較できません.
上述の目安値を使えば,あたため時間で悩むことも,少なくなるかもしれません.(そのかわり,重量を計る手間が増えますが.)
電子レンジ(出力500W)での設定時間の目安は,一般的な食材であれば,「100gにつき1分」程度だと,考えられます.
【バックナンバー】
電子レンジ編・前の記事:容器の変形
電子レンジ編・次の記事:電子レンジの効率
電子レンジ編・一覧へ
電子レンジで加熱できる原理については,文献[2]が詳しいようです.当方,「水分子を振動させる」と記憶していましたが,厳密には正しくないようです.以下,この文献についての,当方の理解です.
・水分子は,集団として,極性(プラスとマイナス)を持っている.
・電磁波によって,水分子の集団としての極性が,周期的に変化する.
(個々の分子の極性が一斉に変化するわけではない).
・この変化に伴って,熱(誘電熱)が発生する.
・この誘電熱によって,水の温度が上がる.
[2]山形大学・冨永研究室HP,水の話,電子レンジで加熱できるわけ
温度の定義=分子の振動ですので,結果的には水分子が振動します.しかし,基本原理としては,電磁波が直接的に水分子を振動させるわけではないようです.
★電子レンジ、何分あたためれば良いか?
電子レンジは,とても便利です.
私の実家に電子レンジが来たのは,今から20年ほど前.平均的な家庭よりかは,やや遅い導入時期だったと記憶しています.導入が遅かったのは,当時,実家の電力契約が20Aほどで,1000W超の電子レンジ(オーブンレンジ)は,荷が重かったためと思われます.電子レンジを買うと同時に,電力契約を増し,新しく,電子レンジ専用のコンセントを設置したことを,覚えています.
実家の電子レンジは,今や高級なオーブンレンジになりました.しかし,我が家で使用しているのは,安価な電子レンジ(おまけオーブン機能つき)です(下図1).
<図1>

この電子レンジですが,温めの加減が,いまひとつ,うまくいきません.「自動あたため」機能もあるのですが,熱くなりすぎる傾向があります.このため,いつも,自分で時間を設定しています.
電子レンジの加熱時間は,どのように設定すればよいのでしょうか.
説明書[1]を見ると,設定時間の目安が記載されていました.設定時間は,次の3つのカテゴリに分類されています.
・あたため :通常モード(出力500W)
・冷凍食品あたため :通常モード(出力500W)
・解凍 :解凍モード(出力170W)
[1]松下電器産業(当時);家庭用オーブンレンジNE-TZ15A取扱説明書,(2006)
具体的な調理時間は,次のように記載されています.
●あたため
・冷ごはん 1杯(150g) 約1分20秒,
・チャーハン 1人分(250g) 約2分40秒,…
●冷凍食品あたため
・ごはん(固まり) 1杯分(150g) 約2~3分,
・ピラフ(パラパラのもの) 1人分(250g) 約4~5分,…
●解凍
・ひき肉 300g 約6分30秒~8分30秒,
・薄切り肉 300g 約5分30秒~7分30秒,…
調理のたびに,このリストを参照してもよいのですが,それは煩わしい気がします.そこで,上のリストから,設定時間を見積もるための簡単な方法を考えてみます.
幸い,このリストには,全ての食材について,分量がグラム単位(液体ではミリリットル単位)で記載されています.そこで,食材の重量[g]と設定時間[min]の関係を,調べてみることにしました.
横軸に食材の重量[g],縦軸に設定時間[min]をとってグラフ化すると,下図2のようになりました.ここで,図2では,あたため,冷凍食品あたため,解凍,のカテゴリごとに,色を変えてプロットしてあります.
※分量がミリリットル単位のものについては,1ミリリットル=1グラムとして,プロットしました.
<図2>

図2を見ると,バラツキはありますが,おおむね,食材の重量と設定時間には,比例関係があると言えます.
プロットしたデータを最小二乗法で線形近似して,比例定数を求めました.この結果から,調理時間の目安は,以下のようになります.
・あたため :100gにつき,1.0分(1分00秒)
・冷凍食品あたため:100gにつき,2.8分(2分50秒)
・解凍 :100gにつき,2.3分(2分20秒)
食材によらず,100gあたりの設定時間がほぼ同じになる理由は,次のように考えられます.
・電子レンジでは,主に水を加熱する.
・一般的な食材の主成分は水である.
・食材中の水分の比率は,食材によって,そう大差はない.
(とはいえ,水分の比率のバラツキはあるので,図2のプロット点はバラつく.)
冷凍食品では,氷→水にするときに余計に熱(融解熱)が必要なこと,最初の温度が低いこと,から,より加熱時間が長く必要になっているのだと思われます.また,解凍では,通常モード(出力500W)よりも,出力が低いモード(出力170W)を使うため,同列には比較できません.
上述の目安値を使えば,あたため時間で悩むことも,少なくなるかもしれません.(そのかわり,重量を計る手間が増えますが.)
★今回の結論
電子レンジ(出力500W)での設定時間の目安は,一般的な食材であれば,「100gにつき1分」程度だと,考えられます.
【バックナンバー】
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(補足)
電子レンジで加熱できる原理については,文献[2]が詳しいようです.当方,「水分子を振動させる」と記憶していましたが,厳密には正しくないようです.以下,この文献についての,当方の理解です.
・水分子は,集団として,極性(プラスとマイナス)を持っている.
・電磁波によって,水分子の集団としての極性が,周期的に変化する.
(個々の分子の極性が一斉に変化するわけではない).
・この変化に伴って,熱(誘電熱)が発生する.
・この誘電熱によって,水の温度が上がる.
[2]山形大学・冨永研究室HP,水の話,電子レンジで加熱できるわけ
温度の定義=分子の振動ですので,結果的には水分子が振動します.しかし,基本原理としては,電磁波が直接的に水分子を振動させるわけではないようです.
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