ボードゲームの中には、明らかに子供と遊ぶのには不向きなテーマがあります。その代表例が、奴隷・植民地・戦争の3つです。
★苦い思い出! 「プエルト・リコ」の大失敗
子供たち(娘12歳、長男8歳、次男6歳)とボードゲームで遊ぶのは、とても楽しいひとときです。しかし、残念ながら、ボードゲームの中には、子供たちに悪影響を与える不安のある商品があるのも事実です。
私は、「プエルト・リコ(Puerto Rico;プエルトリコ)」というボードゲームを買って、強い後悔をしました。買ったのは、2021年の夏ごろ。ボードゲームを本格的に物色するようになって、まだ半年ほどでした。ネット情報ですこぶる評判が良いので、遊んでみたいと思ったのです。

ただ、購入する前から、テーマが懸念点でした。明示はされていないものの、「奴隷船でやってくる黒人奴隷を働かせて、自らの富と名声を高める」ことを強く想起させる舞台設定だったのです。しかし、評判が良いのだから、内容はおもしろいに違いない、と思って、購入してしまいました。
そして何度か遊びましたが、残念ながら、楽しめませんでした。いや、楽しめないどころか、遊ぶたびに憂鬱な気分になりました。当然です。「奴隷から搾取して私腹を肥やそうぜ!」などと、子供たちに説明できるはずがありません。
以来、ボードゲームを選ぶときに、「絶対NGのテーマ」を設けました。以下の3つです。
1)奴隷
2)植民地
3)戦争(現実世界をモデルにしたもの)
2)植民地
3)戦争(現実世界をモデルにしたもの)
★1.奴隷:なんて時代錯誤!
私は、子供たちとボードゲームを遊ぶとき、その「世界観」を大事にしています。初めてゲームを遊ぶときは、いつの時代、どんな場所の話であるか。プレイヤーは誰で、どんな仕事をしているのか。各アクションや物品は、舞台設定上、どんな意味を持っているのか。そうした説明に全員が納得することで、ゲームが驚くほどスムーズに進むのです。
しかし、「プエルト・リコ」では、子供たちにむけて世界観を説明することが、きわめて困難でした。舞台は中南米の島・プエルトリコ。そこに毎ラウンド、茶色いコマが船に乗ってやってくる。これは、「黒人奴隷」が「奴隷船」に乗ってやってくることを暗に示しています。そしてプレイヤーは、これら奴隷を自分の工場で働かせて、いろいろな物品を作らせるのです。要は、「奴隷を使って私腹を肥やす」という内容です。(注:説明書では「移民」と言っています。が、このシチュエーションでは、奴隷を想起せざるを得ない。)
もし、これが映画や小説であれば、奴隷を使う側、奴隷として働く側、双方の視点が描かれるのでしょう。そこに描かれた事柄を見て、前向きな議論をすることも可能でしょう。しかし、ボードゲームでは違います。「奴隷を使って私腹を肥やす」というゲーム目的が設定されたら、それを「絶対的な正義」として、ひたすら前に進むだけです。そこには、人類の過去の大きな過ちに対する反省も、改善への模索もありません。それは、最低な時間の使い方です。ひどい話です。
「プエルト・リコ」は2001年の発売です。当時に比べ、グローバル化が進みました。子供たちの通う小学校にも、海外を故郷とするお友達が何人もいます。もし、子供たちのクラスに、アフリカがルーツのお友達がいることを知っていたら、このゲームを楽しく遊ぶことができるでしょうか?
私は結局、このプエルトリコのテーマについて、子供たちに、合理的で前向きな説明をすることができませんでした。そして、遊ぶたびに憂鬱になるため、早々に処分しました。
「奴隷を使って富を得る」ことを良しとするゲーム内容は、とても受け入れられません。子供と遊ぶ場合に限らず、絶対に遊びたくないテーマです。
★2.植民地:日本でも人気なのか?
「奴隷」と同様に、私が受け入れがたく感じているのが「植民地」です。代表的な例は、「ナヴェガドール(Navegador)」というボードゲーム。この商品では、大航海時代が舞台です。プレイヤーはポルトガルの有力市民となり、世界中に植民地を増やし、支配力を高めることを目指します。
ゲーム中、アクションによって新たな土地、すなわち「植民地(colony;コロニー)」が得られます。しかし、実際の植民地は、そんな簡単なことではありません。あなたが所有権を主張しようとしている土地には、もともと住んでいる人がいるのです。彼らから土地や物品を奪い、文化を破壊し、ときには住民を皆殺しにする。そうして自分が手に入れたと主張している土地が、「植民地」です。単に新しい土地にたどり着いただけで、そこが自分のものになるなどという、そんな簡単な話ではないのです。
「奴隷」と同様、「植民地」も、人類史上の大きな過ちです。しかしボードゲームでは、その過ちを振り返り反省するのではなく、「ゲーム上の正義」として、振りかざすことになります。「SDGs」が叫ばれている現代において、まったく意味が分からない行為です。今、世界全体が一丸となって、搾取する/される構造を変革して、新しい形での「成長」を目指しているのです。
そして、ボードゲーム内に登場する「植民地」は、その言葉の軽さが気になります。最近知って驚いたのが、日本で製作されたボードゲームにも、「世界中に植民地を増やす」という内容の商品があるという事実です。日本がかつて行っていた植民地支配の歴史を考慮すれば、軽々しく「やった、植民地が増えたぜ!」などと言えるはずがありません。ボードゲームの作り手も、遊ぶ側も、安直に「植民地」という言葉を使う人ばかりなのかと、不安になってしまいます。
「植民地」は、既存の住人と文化に対して、破壊と略奪を行った末の成果物です。そんな植民地を増やすことを、楽しめるはずがないでしょう?
★3.戦争:血のニオイは好きですか?
最後に「戦争」です。戦争をテーマとしたボードゲームは、かなり多いです。我が家には、「擬人化された食べ物たちの戦争」がテーマの「フードファイト(Food Fight)」や、「ファンタジー世界の名声をかけた戦争」ともいえる「バイキング・ゴーン・ワイルド(Viking Gone Wild)」などがあります。これらは、架空の世界が舞台なので、おとぎ話やアニメーションのように、「作品」として楽しむことができます。伝統的な「将棋」だって戦争ですが、徹底的に抽象化されているため、純粋な「競技」として遊べます。
しかし、現実世界を舞台とすると、とたんに「血生臭さ」が増します。「これはちょっと」と思った商品が「サイズ:大鎌戦役(Scythe)」です。このゲームでは、「第一次大戦後の架空のヨーロッパ」が舞台です。架空なので、実際とは異なるわけですが、「第一次大戦後」「ヨーロッパ」ですから、現実がモデルです。そして、登場する勢力の名前が、なんと「ラスヴィエト」「クリミアン」など。「ソビエト」と「クリミア」を想起させるように、意図的に命名したとしか思えません。
「サイズ」の発売は2016年。悪いことに、2022年2月、ロシア軍がウクライナに侵攻を開始。この状況下では、このゲームが「ロシア軍になってウクライナを占領する『戦争ゲーム』」と捉えられても仕方がない気がします。もちろん、悪いのはゲームでなく、ロシアです。しかし、現代社会に生きる、少しでも倫理と呼べるものを持った人であれば、このタイミングで、このゲームで遊ぼうとは思わないでしょう。常識を疑われてしまいます。
さらに悪いことに、このゲームでは、登場人物の背景設定が詳細で、実際の生活が感じられるようなイベントの描写があります。こうした描写のために、戦争の生々しさが強調されています。領地を1マス増やすことは、単に「自色コマを置く」だけではない。そこでは建物が破壊され、人々が生活の場を失い、血と火薬のニオイがたちこめている。そんなイメージを持ちながらゲームをするのは、とても精神的に耐えられません。子供たちと遊べるか、という議論の以前の問題です。
個人的な価値観、人としての倫理観を捨てて、敵を倒し、領地を広げ、金銭を得る。それで最後に勝利を宣言する。どう考えても、それは敗者の行為です。
★まとめ:テーマがダメなら、すべて台無し。
ボードゲームを選ぶとき、「絶対NGのテーマ」として、以下の3つがあります。
1)奴隷
2)植民地
3)戦争(現実世界をモデルにしたもの)
2)植民地
3)戦争(現実世界をモデルにしたもの)
ゲームとしておもしろければよい? さあ、どうでしょう。テーマを見た時点で不快感を感じるゲームを、楽しめるはずがありません。
「ゲームだから」と言って、人として持つべき倫理観、自分の価値観を捨てて遊ぶのは、恥ずべき行為です。大事な子供たちと一緒に遊ぶボードゲームであれば、なおさらのことです。ボードゲームを愛する者として、私は、決して、これらのテーマの商品で遊ぶことはありません。
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