パンチカードの超絶ギミックで、興奮しまくりの推理パズル「チューリングマシン」。その面白さの核心とも言える「Xパラドックス」について、説明します。
算数パズル「チューリング・マシン(Turing Machine)」の内容については、以下の記事を参照ください。
◎ボードゲーム「チューリングマシン」のルールと魅力
◎ボードゲーム「チューリングマシン」を実際に遊んだ感想

★「Xパラドックス」の罠に気を付けろ!
難易度が高くなると、手がかりが集まらないと何を判定しているかが不明な判定カードが出てきます。例えば、下のNo.40のカード。▲か■か●のいずれかについて、3との大小関係を比較する判定カードです。ただ、対象が▲か■か●かは、手がかりを集めないと分かりません。

このような判定カードが使われる場合、判定結果が○でも×でも、いったい何が判定されたのか、混乱してしまう場合があります。判定結果を取り違えて、あるべき可能性を無いとしてしまう誤りを、説明書では「Xパラドックス(エックス・パラドックス/クロス・パラドックス)」と呼んでいるようです。
★判定結果の選択肢が消えれば、数字の選択肢も消える?
上述のような複雑な判定を行うカードを、どう取り扱えばよいのか。これを検討するために、まずは下の最も基本的なカード(No.2)から考えてみます。このカードでは、▲の数字について、3との大小関係を判定します。

このカードによる判定結果は、以下の3通りです。
a)▲<3 すなわち、▲=1または2
b)▲=3
c)▲>3 すなわち、▲=4または5
いま、「255」(▲=2、■=5、●=5)という数字をパンチカードで選んで、判定結果が「NG」だったとします。選んだ▲<3ですから、判定結果aに相当します。したがって、正解の数字の▲はaには相当しない、ということを示しています。すなわち、▲=3,4,5のいずれかになります。よって、記録シートから「▲<3」の選択肢を消すのと合わせて、▲の選択肢から「1」「2」を消せます。
逆に、同じ「255」に対して判定結果が「OK」だったなら、正解の数字の▲もaに相当することを示しています。よって、▲=1,2のいずれか、であることが分かります。よって、記録シートから「▲<3」以外の選択肢を消すと同時に、▲の選択肢から「1」「2」以外を消せます。つまり、「判定結果の選択肢と同時に、数字の選択肢を消せる」のです。これが、「Xパラドックス」がない、比較的に簡単な状況です。
判定結果の選択肢が消えても、数字の選択肢は消えない!
以上を踏まえて、 「Xパラドックス」の対象となる、下のカードを考えます(No.26)。▲または■または●のどれか1個だけについて、「3より小さい」に該当するかを判定します。どの記号について判定しているかは決まっているのですが、明示はされません。手がかりを集めない限り、分かりません。また、判定する記号以外の2つの記号については、何の判定もしません。

先ほどと同様、「255」(▲=2、■=5、●=5) で判定してみます。判定結果が「NG」とします。仮定した数字は、▲<3、■≧3、●≧3で、左端の判定結果「▲<3」のみに該当します。判定している記号がどれかによって、以下のいずれか1つが正しい記述となります。
イ)▲についてだけ判定している。そして、▲<3ではない。■●は不明。
ロ)■についてだけ判定している。そして、■≧3ではない。▲●は不明。
ハ)●についてだけ判定している。そして、●≧3ではない。▲■は不明。
この結果から、少なくとも記録シートの選択肢から「▲<3」は消せます。まず、記述イ)が正しいとすれば、「▲<3ではない」です。また、記述ロ)ハ)が正であれば、「▲<3」の判定はしていないので、やはりこの選択肢を消せます。ここで注意が必要なのは、▲の選択肢は、依然1~5のすべてが残ることです。「▲<3」が消えるのならば、▲=1,2を消してしまいたくなるかもしれません。しかし、ロ)ハ)の記述が正しい場合は、▲については一切の評価をせず、判定「NG」が出ます。したがって、依然として▲=1または2の可能性が残っているのです。
つまり、「判定結果の選択肢は消えるが、数字の選択肢は消えない」のです。前述のNo.2のカードで見られた「判定結果の選択肢と同時に、数字の選択肢を消せる」とは、状況が異なります。このような一見矛盾したような現象が起こることを、「Xパラドックス」と呼んでいます。
一方、同じ「255」を入れて、判定結果が「OK」だとします。この場合は、■または●について判定していることはあり得ません。どちらも、3以上の数字を入力しているからです。したがって、以下の記述が正しいことになります。
イ’)▲についてだけ判定している。そして、▲<3である。■●は不明。
この結果から、記録シートの選択肢は「▲<3」だけが残り、「■<3」「●<3」は消えます。これに伴って、数字の可能性として、▲=3,4,5を消せます。ただし依然として、■と●の数字の選択肢は減りません。■と●については、「判定結果の選択肢は消えるが、数字の選択肢は消えない」のです。
★もっと複雑な場合は、どうなるのだろう?
再び以上を踏まえて、さらに複雑なカードを検討します(No.40)。このカードでは、▲か■か●のどれかについて、3との大小関係を判定します。先のカードNo.26と似ていますが、それぞれの判定結果が「3より小さい」「3と同じ」「3より小さい」の3通りに分かれます。計9通りの、判定結果の可能性があるわけです。

考え方は同じです。「255」(▲=2、■=5、●=5) で判定して、判定結果「NG」とします。仮定した数字は、▲<3、■>3、●>3です。これがNGと言うのだから、以下のいずれか1つが正しい記述となります。
イ)▲についてだけ判定している。そして、▲<3ではない。■●は不明。
ロ)■についてだけ判定している。そして、■>3ではない。▲●は不明。
ハ)●についてだけ判定している。そして、●>3ではない。▲■は不明。
もし、イ)が正しいならば、「▲<3」が選択肢として消える。と同時に、■に関する判定すべてと、●に関する判定すべても消えます。■●については判定しないからです。同様に、ロ)が正しいならば、「■>3」と、▲・●に関する判定がすべて消えます。ハ)が正しければ、「●>3」と、▲・■に関する判定がすべて消える、となります。
以上の3通りの結果すべてを総合すると、イ)ロ)ハ)どの場合にも、必ず消える項目があります。それは、「▲<3」「■>3」「●>3」の3項目です。よって、記録シートから、これらの判定結果の選択肢を消せます。ただし、依然として▲=1,2は可能性として残りますし、■=4,5や●=4,5も消えません。ここでもやはり、「判定結果の選択肢は消えるが、数字の選択肢は消えない」のです。
そして最後に、「255」を入れて、判定結果「OK」だった場合を考えます。この場合は、以下3通りの可能性が残ります。
イ’)▲についてだけ判定している。そして、▲<3である。■●は不明。
ロ’)■についてだけ判定している。そして、■>3である。▲●は不明。
ハ’)●についてだけ判定している。そして、●>3である。▲■は不明。
もし、イ’)が正解とすると、「▲<3」以外の▲の選択肢と、■●についての選択肢すべてが消えます。ロ’)なら「■>3」以外の■の選択肢と、▲●の選択肢すべて。ハ’)であれば「●>3」以外が消えます。
以上の3通りの結果を総合すると、イ’)ロ’)ハ’)どの場合でも、「▲<3」「■>3」「●>3」以外の項目は必ず消えます。すなわち、この3個の選択肢だけが残るのです。ところがやはり、この結果によって▲=1,2だけに絞られたり、■=4,5や●=4,5などに絞られたりすることはありません。「判定結果の選択肢は消えるが、数字の選択肢は消えない」が、同様に成り立ちます。
★結局、どう考えれば良いのか?
以上のように、「Xパラドックス」は、詳細に考えると、ひとことで説明するのが難しいことが分かります。しかし、ゲームで行うことは、非常に単純です。どんな条件が来ても、以下の手順を取れば、基本的に問題ありません。
◎判定結果=NGのときの手順
1)提案した数字が該当する判定結果の選択肢を、すべて消す。
2)残った選択肢を確認し、すべての選択肢に該当しない数字があれば消す。
◎判定結果=OKのときの手順
1)提案した数字が該当する判定結果の選択肢だけ残し、他をすべて消す。
2)残った選択肢を確認し、すべての選択肢に該当しない数字があれば消す。
ポイントは、「判定の選択肢の消去」と「数字の選択肢の消去」を、分けて行うことです。この2つは、一般的には連動しないからです。
再び下の簡単なカード(No.2)を用いて、この手順を試してみます。

「255」(▲=2、■=5、●=5) を入れて、判定NGとします。提案した数字が該当する選択肢は「▲<3」のみなので、手順にしたがい、この選択肢だけを消します。
次に、残った選択肢を見ると、「▲=3」「▲>3」 となっています。つまり、▲の可能性として、▲=3,4,5以外はありません。よって、▲=1,2を消せます。
一方、「255」での判定OKだったときは、提案した数字が該当する選択肢は「▲<3」です。手順にしたがい、これ以外の選択肢「▲=3」「▲>3」を消します。
すると、残った選択肢が「▲<3」のみであるので、▲の可能性は▲=1,2だけとなります。すなわち、▲=3,4,5は消せます。
そして次は、「Xパラドックス」のある複雑なカードNo.40です。

「255」(▲=2、■=5、●=5) を入れて、判定NGなら、提案した数字が該当する選択肢は「▲<3」「■>3」「●>3」の3個です。手順にしたがい、これら3個の選択肢を消します。
次に、「残った選択肢を見て数字を消す」手順となります。しかし、左端では■●の評価をせず、中央では▲●の評価をせず、右端では▲■の評価をしない、となっています。すなわち、▲■●のいずれも、評価されない可能性があります。どの記号が評価され、どれがされないか不明なので、数字の選択肢を狭めることができません。
一方、「255」での判定OKだったときは、提案した数字が該当する選択肢は「▲<3」「■>3」「●>3」です。手順どおり、これら以外の選択肢6個が消えます。
残った選択肢は「▲<3」「■>3」「●>3」ですが、やはり▲■●とも、評価対象外となる可能性が残っています。したがって、まだ、数字の選択肢を狭めることができないのです。
ポイントは、選択肢が消えたからといって、すぐに数字を消すのではなく、選択肢が消えた後に、あらためて選択肢全体を見渡して、数字が消せるかどうかを別途判断することです。
★まとめ:もう「Xパラドックス」にだまされないぞ!
以上の手順を踏めば、複雑な判定カードに対しても、正しい結論を導けるようになるはずです。特に、上級編の「エクストリームモード」では、各スロットに判定カード2枚が置かれ、どちらか1枚はニセモノという設定になります。この問題を正しく解くには、上述のような「Xパラドックス」の理解が不可欠となります。
「判定結果の選択肢は消えるが、数字の選択肢は消えない」の鉄則を忘れなければ、どんな難問が来ても大丈夫! のはずです。

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