ボードゲーム「アルマ・マータ」の攻略記事です。
学長別の戦略を、前回から考察しています。
1)コペルニクス…本棚収入2倍
2)ピリングッチョ…B教室学生でボーナス
3)エラスムス…教会ボーナス
4)ペレイラ…スペース読み替え
5)マーシャルク…本を売るとボーナス
6)ダ・ヴィンチ…研究ボーナス
後編(今回)で紹介:
7)グラレアヌス…セットアップボーナス
8)アルベルティ…教授講義フリー
9)パラケルスス…教授復活
10)アグリコラ…占有スペースの必要マスター減
★アルマ・マータの記事一覧★
・アルマ・マータの魅力を語る
・ボードゲーム「アルママータ」購入レビュー
・アルママータの大まかなルール解説
・アルママータ拡張「ニュー・スチューデント」購入レビュー
・アルママータ攻略:学長・教授・学生の能力一覧
・アルママータ攻略:セットアップ・研究カード・栄光タイルリスト
・アルママータ攻略:学長別の戦略(前編)
★学長別、どんな戦略が有効?
ボードゲーム「アルマ・マータ~我らが母校(完全日本語版;Alma Mater)」に熱中しています。ワーカープレースメント方式の、重量級ボードゲームです。これまで、すでに約40回(通常プレイ+ソロプレイ)遊んでいます。
前回に引き続き、学長別の戦略、教授や学生との効果的な組み合わせについて、考察します。
★学長別・攻略方法の考察(後編)
以下、学長ごとの攻略法です。学長一覧については、別の記事にまとめてあります。


◎7.グラレアヌス…セットアップボーナス
最初のセットアップのときに、自分の初期資産を決める「セットアップカード」を、もう1枚追加でもらえます。3枚を山から引いて、好きなものを選べます。また、プレイ中は、教授の講義のたびに、勝利点1ポイントをもらえます。

<特徴>
セットアップカードの価値ですが、おおむね上部の数字×1.5ダカットの価値があります。例えば、「4」のカードなら6ダカット相当(6ダカットもらえるカードもある)、最大「9」のカードなら14ダカット相当です。任意の3枚を山から引いたとき、セットアップカードの数字の最大値がどうなるか、検討してみます。簡単のため、4~9の各1枚ずつが、山に残っているとします。3枚引いたとき、最大値が6になるのは「4・5・6」の1通り。7になるのは3通り、8は6通り、9は10通りです。すると平均値は、(6×1+7×3+8×6+9×10)÷(1+3+6+10)=8.25となります。すなわち、8.25×1.5≒12ダカット相当の収入です。
次に、講義の時にもらえる勝利点を検討します。私たちのゲームでは、平均的な教授獲得数は4人程度です。1ラウンドに1人ずつ追加されると仮定すると、総講義数(フリー講義を含む)は、1+2+3+4=10回となり、10ポイントを獲得できます。ダカット換算で15ダカット(公園アクションから、10ダカットが7ポイントに相当)です。以上から、学長の能力による収入は、12+15=27ダカットが見込まれます。これは、コペルニクスで検討した目標収入25ダカットを満たし、十分な利益と言えます。
この学長を選んだときは、なによりも、スタートダッシュが肝要です。豊富な初期リソースを活かして、1ラウンド目から高位の教授や学生を狙いに行くのが有効です。法律学部の「本3冊をもらえる教授」や、医学部の「4ダカットをもらえる学生」などを得られれば、後のラウンドでリソースの不足に悩むことが減って、有利に展開できます。
教授の講義のたびに1ポイントを得られる能力は、地味ですが、最終的なポイントに効いてきます。このポイントをもらうのを忘れがちなので、ゲーム中は注意しましょう。(特に、胸像の能力でこの学長を取った時は、忘れることが多い。)
<オススメの教授・学生>
グラレアヌスと組み合わせると強いのが、法律学部の「ポイントとダカットを交換する教授」です。通常は2ポイントを10ダカットに交換できますが、グラレアヌスがいれば、実質1ポイントで10ダカットを入手できてしまいます! 特にゲーム後半になって、まとまった現金が必要になるとき(高位の教授を買う、有料の教室に学生を入れる、高額な研究トラックを進む)、この教授の能力が重宝されます。
豊富な初期リソースを利用して、最初から高い収入基盤をつくり、後の活動を容易にすることが、この学長の戦略として重要です。この点では、法律学部の「本3冊をもらえる教授」や「待機マスター1人につき2ダカットもらえる教授」が有用です。学生としては、法律学部の「辞書と1ダカットをもらえる学生」や、医学部の「4ダカットをもらえる学生」が、当初の狙いどころとなると思います。これらの教授・学生は、グラレアヌスを使っていない他プレイヤーにとっても魅力的なので、出遅れると取れなくなってしまうことも多いです。彼らを、開始から早い時期に高確率で押さえられることが、グラレアヌスの強みです。
◎8.アルベルティ…教授講義フリー
レオン・バッティスタ・アルベルティは、教授の講義のときに本を支払わなくてよい、という能力を持っています。

<特徴>
アルベルティの能力は、一見して強力です。教授を無限に使えるように見えて、ゲームをはじめた当初は、強すぎるのでは(専門用語でOP;Over Poweredの略、と言うらしい)、と感じました。しかし、冷静に考えると、他の学長たちと同等にバランスされています。慣れてくれば、彼ばかりが勝つという状況は、決してありません。
学長能力による収入を検討してみます。我々のゲームでは、獲得できる教授数は、おおむね4人程度です。この4人を3~6ラウンドに1人ずつ取ったと仮定します。教授の総講義数は1+2+3+4=10回となりますが、獲得後の最初の講義は、学長によらずフリーです。したがって、アルベルティにより本を節約できる個数は、0+1+2+3=6回に過ぎません。教授講義に使う本は、自分の本とは限りませんので、1冊平均2.5ダカットとすると、6回×2.5ダカット=15ダカット相当です。これだけでは、学長の収入目標である25ダカットに届きません。頑張って教授をもう1人とれば、10回×2.5ダカット=25ダカットに届きます。すなわち、教授5人の獲得が、アルベルティのときの目標となります。
ただ、上の金額だけでは、アルベルティの能力を表しきれていません。すなわち、この学長を使う時には、教授を買う時の本の色を気にしなくてよい、というメリットがあります。通常は、自分で教授をとるときは自分の本を一番多く払うし、すでに他プレイヤーのとった教授を後からとるのは躊躇します。しかし、アルベルティであれば、自分で教授を雇う時でも手持ちリソースで余っている別色の本を使ったり、ほかのプレイヤーが取った(一番上に他プレイヤーの本がある)教授をとったりを、デメリットなく行えます。これは大きな強みです。
いずれにせよ、能力を活かすためには、かなり教授に軸足を置く必要があります。平均的に、教授1人をとる労力は、学生2人をとる労力に匹敵します。教授に注力することは、学生が少ないことにつながり、これは収入基盤が劣ることを意味します。したがって、少ない学生は精鋭部隊である必要があり、どの学生をとるか、十分に吟味しなければなりません。
狙いが教授というのが明確で、いっけん効果が大きそうな能力を持っているので、初心者は使ってみたくなる学長だと思います。しかしその実際は、学生獲得のバランスが難しく、教授をかなり頑張ってとらないと効果を活かしきれない、という、使い方が難しい学長です。反面、その力をうまく使えば、非常に強力です。経験を積むほど、その能力の高さを実感する学長だと思います。
<オススメの教授・学生>
アルベルティは、教授獲得重視の戦略となります。これは逆にいうと、必要な学生をいかに少ない労力で確保するか、という思案が必要な戦略です。そこで医学部(または法律学部)の「学生を本1冊減らして呼べる教授」が役立ちます。通常であれば、この教授を使うのに本1冊を要して、本1冊減らす効果は限定的なのですが、アルベルティであれば、本を本当に1冊減らして、学生を呼ぶことができます。マスターも不要なので、そのマスターを教授獲得のための行動に回すことができます。
学生については、医学部の「教授獲得時のダカットが無料になる学生」が最有力です。まずこの学生をとってから、教授を順次とっていく、というのが、アルベルティのときの効率的な立ち回りになると思います。
◎9.パラケルスス…教授復活
パラケルススは、いちど使った教授を復活させて、もう一度使えるという能力を持っています。1ラウンドに1回だけ、この能力を使えます。

<特徴>
パラケルススについては、学長の能力による効果を、定量的に(ダカット数で)計るのは、難しいです。あえてダカットに換算してみます。研究トラックで「教授1人を行動済みにする、または、5ダカット支払う」という記述があることから、教授1回の講義ポテンシャル=5ダカット、と換算します。2ラウンド目に最初の教授をとって、以降のラウンド5回にわたって、学長の能力を活用できたと仮定します。すると、5回×5ダカット=25ダカットとなります。ただし、本を5冊消費しますので、これが自分の本だとしても、5冊×1ダカット=5ダカットの損失。実質の利益は、25-5=20ダカットです。これは、学長能力活用の目標値25ダカットに届きません。1ラウンドめから教授をとれば、6回×(5-1)ダカット=24ダカットとなり、目標を満たせます。つまり、教授重視の戦略が欠かせません。
パラケルススは、教授さえいれば、いつでも講義後に復活できるので、能力を発揮しやすい学長では、と思うかもしれません。しかし実際には、復活させた教授を使うのにも本が必要です。能力を使いそびれる事態が発生しないように、本のリソース管理をしっかりする必要があります。早いラウンドで教授を確保する必要がある、という点もあり、初心者の場合、能力を発揮しにくい学長と言えそうです。
また、復活させるのはどの教授でも有用、というわけでもありません。上述の通り、教授1回の使用は5ダカットに相当する、と換算しました。これはすなわち、教授を使うならば、それによって5ダカット相当の利益を得なければならない、ということを示します。もちろん、この条件は、他のプレイヤーも同様なのです。しかしパラケルススを使うときは、この「1回5ダカット相当」を強く意識して、注意深く教授を選ばないと、学長からの利益を十分に得られないのです。対照的に、例えばコペルニクスであれば、「本棚の本を埋める」という決まった行動をとれば、常に80~100%の学長効果を発揮できます。パラケルススは、アルベルティ同様、効果は分かりやすいけれども、初心者には能力を発揮しきれない学長ではないか、と思います。
<オススメの教授・学生>
パラケルススは教授を使える回数を増やせるけれども、その分、多くの本を必要とします。そこで、法律学部の「本3冊をもらえる教授」が有用です。彼を使えば教科書が戻ってくるので、実質無料で2冊の本を得られることになります。リソース管理が不十分でも、確実に使えて、確実に利益を享受できます。数学部の「その場で本棚収入を得る教授」は、確実に5ダカット程度を入手できて有用に思えますが、実際は講義に自分の本が必要、かつ、本棚にも自分の本が必要、ということで、自分の本が大幅に不足しがちです。思ったほど効果的ではないので、注意が必要です。
多数必要な本の確保を容易にするという点では、芸術学部の「自分の本を8冊まで買える学生」が有用です。大学ボードに印刷された学生を使ってしまっても、もう一度、自分の本を調達する機会が得られます。パラケルススで復活させる教授は、自分の本で使う教授にすることが多いでしょうから、この学生の能力は有用です。
パラケルススの能力が際立って強力になるのは、胸像スペースにアルベルティ(教授講義無料)があるときです。この2人の学長が組み合わさると、教授を復活でき、しかも無料、ということで、教授を使い放題、のような状況になります。もし、胸像スペースの入手しやすい場所にアルベルティがいれば、パラケルススはかなり有力な選択肢となります。
◎10.アグリコラ…占有スペースの必要マスター減
ゲオルク・アグリコラの能力は、占有スペースにマスターを置くとき、通常よりも1人少ないマスターで済む、というものです。

<特徴>
アルマ・マータは、いわゆる「ワーカープレイスメント」式のゲームです。すでにワーカー(マスター)の置かれたアクション・スペースを使うには、通常より1人多いマスターという、「追加コスト」を支払わねばなりません。ところがアグリコラは、このゲームの基本ルールを塗り替えてしまいます。マスターがすでに1人いても、自色マスター1人を置くだけで、そのスペースを使えるのです(すでに2人いたら、2人必要)。後半に進むにしたがって、各プレイヤーが教授や学生の獲得に集中しますので、こうした局面で競り負けない、強力な能力と言えます。
このアグリコラも、能力の金額換算が難しいです。パラケルスス同様、研究トラックの記述から、マスター1人≒5ダカット、と換算して見積もります。毎ラウンド行動が1回ずつ競合したとすると、1ラウンドにつき1人のマスターを節約できます。すなわち、5ダカット×6ラウンド=30ダカットと換算できます。実際には、80%程度の競合率としても、30×0.8=24ダカットです。これは、学長能力の有効活用の目安25ダカットを満足します。
アグリコラを使う時は、自分の思った通りの手順で、思った通りの行動ができます。また、プレイ順の影響が小さいので、「教会を使って次ラウンドの先頭を狙う」というような戦術を考える必要がありません。これらの点で、初心者にも使いやすい学長ではないか、と思います。
ただ、アグリコラの能力をどこまで発揮できるか、は、他プレイヤーの動向の影響が大きいです。他の人と使いたいスペースがかぶらない限り、この学長の効果は発揮できないからです。例えば、誰もが欲しがるような使いやすい高位の教授が同じスペースに並んでいるときには、後半戦でその教授の争奪戦が起きることが予想されます。しかし、もし他プレイヤーがグレアヌスを使っていれば、最初のラウンドであっさりとその教授がとられてしまい、予想していたスペースの奪い合いが生じない、といったこともあり得ます。
上述のような点から、アグリコラが強力だったかどうかは、終わってみないと分からない、ということになります。しかし、後半にしたがうにつれ、同じスペースの奪い合い(教授・学生・研究)が起きる傾向は間違いありません。まったく能力を活かせない、というゲームは少ないと感じています。特に能力を意識しなくても能力を発揮できるという、平均的に使いやすい学長です。
<オススメの教授・学生>
アグリコラは、プレイ順を気にせず、自分のペースで行動ができるのがメリットです。このメリットを生かせるのが、法律学部の「待機所マスター1人につき2ダカットもらえる教授」です。この教授はラウンドの1手目に使うのが良いのですが、通常だと1手目でマスターを置けないため、スペースの競り合いに負けてしまいます。しかしアグリコラであれば、まずこの教授で資金を得てから、ゆっくりとマスターによる行動を開始しても問題ありません。同様の理由から、芸術学部の「待機所マスター1人につき1ポイントもらえる教授」も、アグリコラと相性が良いです。
アグリコラは、後半の教授争奪戦に強いのも特徴です。特に2~3人プレイでは、教授獲得のスペースが2ヶ所しかないので、アグリコラの有用性が増します。教授獲得の機会が多い、というメリットを生かせるのが、法律学部の「教授をとると緑研究ステップをもらえる学生」です。後半戦では、研究ステップをいかに効率的に押し進めるかが焦点になることも多く、この学生は有用です。しかもアグリコラであれば、緑ステップが有効なタイミングまで待って(黒ステップでも進みやすいところは別アクションで進めた後で)、教授を取りに行くことができますから、これは強力です。
★まとめ:熟練度別・おすすめ学長
以上を踏まえて、初心者に扱いやすい学長は、以下です。
◎1位:コペルニクス(本棚収入2倍)
本棚に本を並べるだけで収入になる、分かりやすさが魅力です。現金収入なので、いろいろな用途に使いやすいです。手を失敗しても、現金が潤沢ならばリカバーできます。はじめてアルマ・マータを遊ぶ人でも、能力を発揮しやすい学長だと思います。
◎2位:ピリングッチョ(教室B学生でボーナス)
学生が教室Bに入るたびに、辞書と現金が手に入ります。学生重視の戦略になるので、当初の目標を設定しやすいです。学生は永続効果を持ち、収入基盤になるので、後に進むにしたがってプレイしやすくなります。後半に行くに従い大学が拡大していくというゲームの基本的な流れに乗りやすく、初心者に向いた学長です。
◎3位:アグリコラ(占有スペースのマスター1人減)
直接的な収入はないのですが、占有後のスペースにもマスターを置けるので、自分のペースでゲームを進められます。相手の行動によって手順を考え直す必要がないので、柔軟な方針変更に慣れていない初心者にとって、格段に遊びやすくなります。特に後半は、他プレイヤーと競合しても行動できなくなることがないので、最後まで自分の思った通りに行動ができます。
一方、上級者向けの学長として、以下3人を選びました。
◎1位:ペレイラ(スペース読み替え)
アクションスペースを読み替えるペレイラは、分かりやすいのですが、直接的な効果は地味です。初回ラウンドで12ダカットを取るなど、やや突飛な行動をとらないと、他学長に匹敵するようなメリットは得られないのでは、と感じています。
◎2位:パラケルスス(教授復活)
教授を復活させる能力は、いっけん有用そうですが、十分に活用するには、教授の獲得タイミングや、獲得する教授の種類をしっかり検討することが大事です。また、本の消費量も増えるので、リソース管理も重要になります。さらに、教授を早期に獲得する戦略を要しますが、学生を取りにくくなり、収入基盤が弱くなりがちです。ゲームの全体像を把握するまでは能力を引き出すのが難しく、メリットを得にくい学長だと思います。
◎3位:ダ・ヴィンチ(研究ボーナス)
研究トラックで1歩進むと、黒ステップをもう1個得られるのですが、使うタイミングが難しいです。研究トラックは、セットアップによって、難易度や獲得ボーナスにかなり違いがあるためです。初心者には、この判別が困難なため、無理に研究を進めて後に何も残らない、ということもあり得ます。研究トラックの見通しを検討できる上級者にならないと、この学長を活かすのは難しそうです。(反面、研究ボーナス2倍は非常に強力で、セットアップによっては最終得点を20点以上も伸ばします。)
「アルマ・マータ」の学長はどれも強力で、かつ、各学長の能力は拮抗しています。どの学長が絶対に有利、ということはないと思います。
ただし、プレイ習熟度やプレイスタイルによって、有効活用しにくい学長もあります。また、盤面のセットアップに強さが左右される学長もいます。自身の得意な戦略や、盤面の状況を踏まえて、適切な学長を選択することが、高得点をとるためには欠かせません。
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◎7.グラレアヌス…セットアップボーナス
最初のセットアップのときに、自分の初期資産を決める「セットアップカード」を、もう1枚追加でもらえます。3枚を山から引いて、好きなものを選べます。また、プレイ中は、教授の講義のたびに、勝利点1ポイントをもらえます。

<特徴>
セットアップカードの価値ですが、おおむね上部の数字×1.5ダカットの価値があります。例えば、「4」のカードなら6ダカット相当(6ダカットもらえるカードもある)、最大「9」のカードなら14ダカット相当です。任意の3枚を山から引いたとき、セットアップカードの数字の最大値がどうなるか、検討してみます。簡単のため、4~9の各1枚ずつが、山に残っているとします。3枚引いたとき、最大値が6になるのは「4・5・6」の1通り。7になるのは3通り、8は6通り、9は10通りです。すると平均値は、(6×1+7×3+8×6+9×10)÷(1+3+6+10)=8.25となります。すなわち、8.25×1.5≒12ダカット相当の収入です。
次に、講義の時にもらえる勝利点を検討します。私たちのゲームでは、平均的な教授獲得数は4人程度です。1ラウンドに1人ずつ追加されると仮定すると、総講義数(フリー講義を含む)は、1+2+3+4=10回となり、10ポイントを獲得できます。ダカット換算で15ダカット(公園アクションから、10ダカットが7ポイントに相当)です。以上から、学長の能力による収入は、12+15=27ダカットが見込まれます。これは、コペルニクスで検討した目標収入25ダカットを満たし、十分な利益と言えます。
この学長を選んだときは、なによりも、スタートダッシュが肝要です。豊富な初期リソースを活かして、1ラウンド目から高位の教授や学生を狙いに行くのが有効です。法律学部の「本3冊をもらえる教授」や、医学部の「4ダカットをもらえる学生」などを得られれば、後のラウンドでリソースの不足に悩むことが減って、有利に展開できます。
教授の講義のたびに1ポイントを得られる能力は、地味ですが、最終的なポイントに効いてきます。このポイントをもらうのを忘れがちなので、ゲーム中は注意しましょう。(特に、胸像の能力でこの学長を取った時は、忘れることが多い。)
<オススメの教授・学生>
グラレアヌスと組み合わせると強いのが、法律学部の「ポイントとダカットを交換する教授」です。通常は2ポイントを10ダカットに交換できますが、グラレアヌスがいれば、実質1ポイントで10ダカットを入手できてしまいます! 特にゲーム後半になって、まとまった現金が必要になるとき(高位の教授を買う、有料の教室に学生を入れる、高額な研究トラックを進む)、この教授の能力が重宝されます。
豊富な初期リソースを利用して、最初から高い収入基盤をつくり、後の活動を容易にすることが、この学長の戦略として重要です。この点では、法律学部の「本3冊をもらえる教授」や「待機マスター1人につき2ダカットもらえる教授」が有用です。学生としては、法律学部の「辞書と1ダカットをもらえる学生」や、医学部の「4ダカットをもらえる学生」が、当初の狙いどころとなると思います。これらの教授・学生は、グラレアヌスを使っていない他プレイヤーにとっても魅力的なので、出遅れると取れなくなってしまうことも多いです。彼らを、開始から早い時期に高確率で押さえられることが、グラレアヌスの強みです。
◎8.アルベルティ…教授講義フリー
レオン・バッティスタ・アルベルティは、教授の講義のときに本を支払わなくてよい、という能力を持っています。

<特徴>
アルベルティの能力は、一見して強力です。教授を無限に使えるように見えて、ゲームをはじめた当初は、強すぎるのでは(専門用語でOP;Over Poweredの略、と言うらしい)、と感じました。しかし、冷静に考えると、他の学長たちと同等にバランスされています。慣れてくれば、彼ばかりが勝つという状況は、決してありません。
学長能力による収入を検討してみます。我々のゲームでは、獲得できる教授数は、おおむね4人程度です。この4人を3~6ラウンドに1人ずつ取ったと仮定します。教授の総講義数は1+2+3+4=10回となりますが、獲得後の最初の講義は、学長によらずフリーです。したがって、アルベルティにより本を節約できる個数は、0+1+2+3=6回に過ぎません。教授講義に使う本は、自分の本とは限りませんので、1冊平均2.5ダカットとすると、6回×2.5ダカット=15ダカット相当です。これだけでは、学長の収入目標である25ダカットに届きません。頑張って教授をもう1人とれば、10回×2.5ダカット=25ダカットに届きます。すなわち、教授5人の獲得が、アルベルティのときの目標となります。
ただ、上の金額だけでは、アルベルティの能力を表しきれていません。すなわち、この学長を使う時には、教授を買う時の本の色を気にしなくてよい、というメリットがあります。通常は、自分で教授をとるときは自分の本を一番多く払うし、すでに他プレイヤーのとった教授を後からとるのは躊躇します。しかし、アルベルティであれば、自分で教授を雇う時でも手持ちリソースで余っている別色の本を使ったり、ほかのプレイヤーが取った(一番上に他プレイヤーの本がある)教授をとったりを、デメリットなく行えます。これは大きな強みです。
いずれにせよ、能力を活かすためには、かなり教授に軸足を置く必要があります。平均的に、教授1人をとる労力は、学生2人をとる労力に匹敵します。教授に注力することは、学生が少ないことにつながり、これは収入基盤が劣ることを意味します。したがって、少ない学生は精鋭部隊である必要があり、どの学生をとるか、十分に吟味しなければなりません。
狙いが教授というのが明確で、いっけん効果が大きそうな能力を持っているので、初心者は使ってみたくなる学長だと思います。しかしその実際は、学生獲得のバランスが難しく、教授をかなり頑張ってとらないと効果を活かしきれない、という、使い方が難しい学長です。反面、その力をうまく使えば、非常に強力です。経験を積むほど、その能力の高さを実感する学長だと思います。
<オススメの教授・学生>
アルベルティは、教授獲得重視の戦略となります。これは逆にいうと、必要な学生をいかに少ない労力で確保するか、という思案が必要な戦略です。そこで医学部(または法律学部)の「学生を本1冊減らして呼べる教授」が役立ちます。通常であれば、この教授を使うのに本1冊を要して、本1冊減らす効果は限定的なのですが、アルベルティであれば、本を本当に1冊減らして、学生を呼ぶことができます。マスターも不要なので、そのマスターを教授獲得のための行動に回すことができます。
学生については、医学部の「教授獲得時のダカットが無料になる学生」が最有力です。まずこの学生をとってから、教授を順次とっていく、というのが、アルベルティのときの効率的な立ち回りになると思います。
◎9.パラケルスス…教授復活
パラケルススは、いちど使った教授を復活させて、もう一度使えるという能力を持っています。1ラウンドに1回だけ、この能力を使えます。

<特徴>
パラケルススについては、学長の能力による効果を、定量的に(ダカット数で)計るのは、難しいです。あえてダカットに換算してみます。研究トラックで「教授1人を行動済みにする、または、5ダカット支払う」という記述があることから、教授1回の講義ポテンシャル=5ダカット、と換算します。2ラウンド目に最初の教授をとって、以降のラウンド5回にわたって、学長の能力を活用できたと仮定します。すると、5回×5ダカット=25ダカットとなります。ただし、本を5冊消費しますので、これが自分の本だとしても、5冊×1ダカット=5ダカットの損失。実質の利益は、25-5=20ダカットです。これは、学長能力活用の目標値25ダカットに届きません。1ラウンドめから教授をとれば、6回×(5-1)ダカット=24ダカットとなり、目標を満たせます。つまり、教授重視の戦略が欠かせません。
パラケルススは、教授さえいれば、いつでも講義後に復活できるので、能力を発揮しやすい学長では、と思うかもしれません。しかし実際には、復活させた教授を使うのにも本が必要です。能力を使いそびれる事態が発生しないように、本のリソース管理をしっかりする必要があります。早いラウンドで教授を確保する必要がある、という点もあり、初心者の場合、能力を発揮しにくい学長と言えそうです。
また、復活させるのはどの教授でも有用、というわけでもありません。上述の通り、教授1回の使用は5ダカットに相当する、と換算しました。これはすなわち、教授を使うならば、それによって5ダカット相当の利益を得なければならない、ということを示します。もちろん、この条件は、他のプレイヤーも同様なのです。しかしパラケルススを使うときは、この「1回5ダカット相当」を強く意識して、注意深く教授を選ばないと、学長からの利益を十分に得られないのです。対照的に、例えばコペルニクスであれば、「本棚の本を埋める」という決まった行動をとれば、常に80~100%の学長効果を発揮できます。パラケルススは、アルベルティ同様、効果は分かりやすいけれども、初心者には能力を発揮しきれない学長ではないか、と思います。
<オススメの教授・学生>
パラケルススは教授を使える回数を増やせるけれども、その分、多くの本を必要とします。そこで、法律学部の「本3冊をもらえる教授」が有用です。彼を使えば教科書が戻ってくるので、実質無料で2冊の本を得られることになります。リソース管理が不十分でも、確実に使えて、確実に利益を享受できます。数学部の「その場で本棚収入を得る教授」は、確実に5ダカット程度を入手できて有用に思えますが、実際は講義に自分の本が必要、かつ、本棚にも自分の本が必要、ということで、自分の本が大幅に不足しがちです。思ったほど効果的ではないので、注意が必要です。
多数必要な本の確保を容易にするという点では、芸術学部の「自分の本を8冊まで買える学生」が有用です。大学ボードに印刷された学生を使ってしまっても、もう一度、自分の本を調達する機会が得られます。パラケルススで復活させる教授は、自分の本で使う教授にすることが多いでしょうから、この学生の能力は有用です。
パラケルススの能力が際立って強力になるのは、胸像スペースにアルベルティ(教授講義無料)があるときです。この2人の学長が組み合わさると、教授を復活でき、しかも無料、ということで、教授を使い放題、のような状況になります。もし、胸像スペースの入手しやすい場所にアルベルティがいれば、パラケルススはかなり有力な選択肢となります。
◎10.アグリコラ…占有スペースの必要マスター減
ゲオルク・アグリコラの能力は、占有スペースにマスターを置くとき、通常よりも1人少ないマスターで済む、というものです。

<特徴>
アルマ・マータは、いわゆる「ワーカープレイスメント」式のゲームです。すでにワーカー(マスター)の置かれたアクション・スペースを使うには、通常より1人多いマスターという、「追加コスト」を支払わねばなりません。ところがアグリコラは、このゲームの基本ルールを塗り替えてしまいます。マスターがすでに1人いても、自色マスター1人を置くだけで、そのスペースを使えるのです(すでに2人いたら、2人必要)。後半に進むにしたがって、各プレイヤーが教授や学生の獲得に集中しますので、こうした局面で競り負けない、強力な能力と言えます。
このアグリコラも、能力の金額換算が難しいです。パラケルスス同様、研究トラックの記述から、マスター1人≒5ダカット、と換算して見積もります。毎ラウンド行動が1回ずつ競合したとすると、1ラウンドにつき1人のマスターを節約できます。すなわち、5ダカット×6ラウンド=30ダカットと換算できます。実際には、80%程度の競合率としても、30×0.8=24ダカットです。これは、学長能力の有効活用の目安25ダカットを満足します。
アグリコラを使う時は、自分の思った通りの手順で、思った通りの行動ができます。また、プレイ順の影響が小さいので、「教会を使って次ラウンドの先頭を狙う」というような戦術を考える必要がありません。これらの点で、初心者にも使いやすい学長ではないか、と思います。
ただ、アグリコラの能力をどこまで発揮できるか、は、他プレイヤーの動向の影響が大きいです。他の人と使いたいスペースがかぶらない限り、この学長の効果は発揮できないからです。例えば、誰もが欲しがるような使いやすい高位の教授が同じスペースに並んでいるときには、後半戦でその教授の争奪戦が起きることが予想されます。しかし、もし他プレイヤーがグレアヌスを使っていれば、最初のラウンドであっさりとその教授がとられてしまい、予想していたスペースの奪い合いが生じない、といったこともあり得ます。
上述のような点から、アグリコラが強力だったかどうかは、終わってみないと分からない、ということになります。しかし、後半にしたがうにつれ、同じスペースの奪い合い(教授・学生・研究)が起きる傾向は間違いありません。まったく能力を活かせない、というゲームは少ないと感じています。特に能力を意識しなくても能力を発揮できるという、平均的に使いやすい学長です。
<オススメの教授・学生>
アグリコラは、プレイ順を気にせず、自分のペースで行動ができるのがメリットです。このメリットを生かせるのが、法律学部の「待機所マスター1人につき2ダカットもらえる教授」です。この教授はラウンドの1手目に使うのが良いのですが、通常だと1手目でマスターを置けないため、スペースの競り合いに負けてしまいます。しかしアグリコラであれば、まずこの教授で資金を得てから、ゆっくりとマスターによる行動を開始しても問題ありません。同様の理由から、芸術学部の「待機所マスター1人につき1ポイントもらえる教授」も、アグリコラと相性が良いです。
アグリコラは、後半の教授争奪戦に強いのも特徴です。特に2~3人プレイでは、教授獲得のスペースが2ヶ所しかないので、アグリコラの有用性が増します。教授獲得の機会が多い、というメリットを生かせるのが、法律学部の「教授をとると緑研究ステップをもらえる学生」です。後半戦では、研究ステップをいかに効率的に押し進めるかが焦点になることも多く、この学生は有用です。しかもアグリコラであれば、緑ステップが有効なタイミングまで待って(黒ステップでも進みやすいところは別アクションで進めた後で)、教授を取りに行くことができますから、これは強力です。
★まとめ:熟練度別・おすすめ学長
以上を踏まえて、初心者に扱いやすい学長は、以下です。
◎1位:コペルニクス(本棚収入2倍)
本棚に本を並べるだけで収入になる、分かりやすさが魅力です。現金収入なので、いろいろな用途に使いやすいです。手を失敗しても、現金が潤沢ならばリカバーできます。はじめてアルマ・マータを遊ぶ人でも、能力を発揮しやすい学長だと思います。
◎2位:ピリングッチョ(教室B学生でボーナス)
学生が教室Bに入るたびに、辞書と現金が手に入ります。学生重視の戦略になるので、当初の目標を設定しやすいです。学生は永続効果を持ち、収入基盤になるので、後に進むにしたがってプレイしやすくなります。後半に行くに従い大学が拡大していくというゲームの基本的な流れに乗りやすく、初心者に向いた学長です。
◎3位:アグリコラ(占有スペースのマスター1人減)
直接的な収入はないのですが、占有後のスペースにもマスターを置けるので、自分のペースでゲームを進められます。相手の行動によって手順を考え直す必要がないので、柔軟な方針変更に慣れていない初心者にとって、格段に遊びやすくなります。特に後半は、他プレイヤーと競合しても行動できなくなることがないので、最後まで自分の思った通りに行動ができます。
一方、上級者向けの学長として、以下3人を選びました。
◎1位:ペレイラ(スペース読み替え)
アクションスペースを読み替えるペレイラは、分かりやすいのですが、直接的な効果は地味です。初回ラウンドで12ダカットを取るなど、やや突飛な行動をとらないと、他学長に匹敵するようなメリットは得られないのでは、と感じています。
◎2位:パラケルスス(教授復活)
教授を復活させる能力は、いっけん有用そうですが、十分に活用するには、教授の獲得タイミングや、獲得する教授の種類をしっかり検討することが大事です。また、本の消費量も増えるので、リソース管理も重要になります。さらに、教授を早期に獲得する戦略を要しますが、学生を取りにくくなり、収入基盤が弱くなりがちです。ゲームの全体像を把握するまでは能力を引き出すのが難しく、メリットを得にくい学長だと思います。
◎3位:ダ・ヴィンチ(研究ボーナス)
研究トラックで1歩進むと、黒ステップをもう1個得られるのですが、使うタイミングが難しいです。研究トラックは、セットアップによって、難易度や獲得ボーナスにかなり違いがあるためです。初心者には、この判別が困難なため、無理に研究を進めて後に何も残らない、ということもあり得ます。研究トラックの見通しを検討できる上級者にならないと、この学長を活かすのは難しそうです。(反面、研究ボーナス2倍は非常に強力で、セットアップによっては最終得点を20点以上も伸ばします。)
「アルマ・マータ」の学長はどれも強力で、かつ、各学長の能力は拮抗しています。どの学長が絶対に有利、ということはないと思います。
ただし、プレイ習熟度やプレイスタイルによって、有効活用しにくい学長もあります。また、盤面のセットアップに強さが左右される学長もいます。自身の得意な戦略や、盤面の状況を踏まえて、適切な学長を選択することが、高得点をとるためには欠かせません。
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